30代消化器内科医の日記

30代男性、仕事は消化器内科医。趣味はゴルフとロードバイク。常習飲酒者。そんなありふれた一人の独白を好きなように書くための場所を目指しています。

冬のもてぎエンデューロに初めて出場した話

ちょっと前の話になるが,昨年11月23日に初めてソロのエンデューロというものに出場した.
これまで大学時代に自転車部のなんとなくのチームエンデューロに出たことがあり,自意識過剰の極みにいたため「全然走れるわ!ソロでやりたいくらいだわ!」と思っていた記憶がある.
それからしばらくバイクもたまにしか乗らず,イベントからも離れていたが,きっかけは今一躍有名となったYouTuber まさ/高倉正善さんの動画だった.とにかく楽しそうに乗っている姿を見て「自分もこんな風に走りたい」と憧れたんだと思う.


「2時間じゃ短く感じちゃうかな,でも6時間は長そうだし…4時間にしよう」
無知とは恐ろしいもので,本当にこんなことを思いながら4時間ソロにエントリーした.


そのために昔ワンオーナーで購入したままほったらかしになっていたバイクをきっちりメンテナンスすることにした.
空き家を使って作業部屋も作りながらの作業だったが,その話についてはまた別の機会に.


レース当日,オキニのGARMIN epix proが応援してくれる.


テンション上がりながら会場のモビリティリゾートもてぎへ.


夜が開けはじめた時刻,自分でなんとなく立てたタイムスケジュールに従い準備を進めていく.テンションをあげるためにチョイスした曲のプレイリストを聴きながら受付を待つ.
すると…


広報用のビデオの方が受付の様子を撮っているではないか


まずい


サイクルイベントにこれからでる人間が,あまつさえフルワイヤレスイヤホン(片耳)をして受付の方と会話をしている様子などいいイメージなわけがない


慌ててイヤホンを外してポケットへ突っ込む


受付が済んでウォーミングアップをしようとしたところで気がつく




イヤホンは?



いくら探しても見当たらないではないか
それはもう絵に描いたような不審者ぶりで受付の辺りの地面を舐めるように眺めている30代男性.


結局イヤホンは見つからず,朝イチの小さくて大きな不幸に見舞われながら淡々と準備をして試走へ.まさ/高倉正善さんが「ガチの試走です」と言っていたことを思い出しガンガン踏む30代初心者.


試走でかなりへばったが,きっとこれがいいんだろう.心拍数とか上がったし…と思いながら試走を3周ほどしてレースの準備.気づけばあっという間にレース開始前になった.


開始前のゲートをパチリ.


一応あらかじめ自分で立てていた予定の通りの準備はできた.朝食も,補給食もしっかり詰めてボトルも満タン2本で万全状態だ.


いざ,イベント開幕.




え、しんどくない?


先頭集団とかもう気づいたら見えないし,第二集団について行こうとしたけど、ガリガリどころかドボドボガソリン撒き散らすが如く,まさに生粋のアメリカンマッスルカーのフルアクセルの如く体力メーターが減っていくのがわかる.


当初,30分ごとに栄養補給を挟もうとしていた(一応それは完遂したが)のでなんとなくわかるが,開幕30分の補給の時点で集団に張り付いているのがやっとで余裕のありそうなダンディな先輩ローディーさんに「前引いてあげるから食べてていいよ!」と言ってもらって惚れた.



そしてちぎれた



あとはもうその場その場で通りすがりの小集団に混ぜ込んでもらっては別れを繰り返す作業.先行する集団に何度も抜かれたが,彼らの集団に混じっては絶対にいけないことだけは理解できたのでひたすら左側を死守した.


今大会では規定周回数を走れば完走メダルが貰えるとのことだったので,そこまで止まらずに頑張ろうと思い自分を奮起させて頑張った.


思い描いていたビジョンは週回数を繰り返すたびに現実で塗り替えられていき,気がつけば自分の夢想した世界はどこにもなく,そこにはひたすら己の脚の痙攣とケツの痛みに抗い,静かに独り闘いを繰り広げる30代男性の姿しかなかった.そう,これこそが現実(痛み)だったのだ.


精一杯カッコつけてるつもりだったが,顔が歪んでいるのは自身との闘いによる痛み.



GARMINにはお見通しのようだ.


結局規定周回数を超えた後も補給だけは欠かさず続けた結果,スタミナの微量回復とガス欠を繰り返しながらなんとか4時間休憩なく走り終える事ができた.
しかし,実際には1時間くらいからずっと両足が攣って騙し騙し乗っていたので後日筋肉量がめちゃくちゃ落ちた.


無事もらう事ができた完走メダル.


完走直後はチップ回収所の脇に倒れ込んでひたすら乾いた笑いをしていた.笑うしかなかったのだ.辛すぎて.


というわけで人生初となるエンデューロイベントのソロ出場という挑戦はとんでもない目に遭わされて幕を閉じた.
しかし,それこそが挑戦の本質であること,現実を知ることこそが強くなる事なんだ.とやけに哲学じみた考えが出来たのはきっと全てを出し尽くして現実を見る事ができたからなのだろう.


そして私は次回,春のもてぎエンデューロにも4時間ソロでリベンジ出場することを誓ったのだった.


ちなみに,朝にいなくなっていたイヤホンはレース後に発見された.やはりどこかで落としていたようで,残念ながら「SPD-SLペダルのような何か」で踏まれたような壊れ方だったが,不思議と音楽は聞けた.
まぁ落としたのは自分なので仕方ない.小さくて大きな不幸はもっと小さな幸せとなって帰ってきた.


しかし最終的に後日再起不能になった.ちくしょう.


おしまい


今回は123.93km 
Ave 30.7km/h

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